為替変動リスクを低減!スワップ・アービトラージとは

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スワップポイント投資では、ロット数とロスカットラインに気を付ければ、インカムゲインについてはコントロールが可能なことを説明しました。

保有したレートによっては「キャピタルゲインによる損失が回避できない」という問題点を解決するため、「スワップ・アービトラージ」と呼ばれる方法について説明します。

アービトラージとは?

まず初めに「アービトラージ」とはどういう意味でしょうか?あまり聞きなれない言葉ですよね。自分が最初に聞いた時のイメージはコチラです😎

アービトラージとは、英語で"arbitrage"と書きます。日本語では「裁定取引」のことです。これでもちょっと難しいですね。

裁定取引とは金融市場における価格差=サヤに注目して、価格差が開いているときに割安なモノを買い割高なモノを売る、そして価格差が縮小したときに決済することで利益を得ようという手法です。「サヤ取り」とも呼ばれます。

サヤとは

「サヤ」とは金融取引において、価格差のことを指します。

江戸時代の米相場で限月間の価格差を「差也」と表記したのが語源と言われています。

同一銘柄での現物と先物の価格差、業者の違いによる価格差、異種銘柄の価格差など、投資の世界では価格差全般のことを「サヤ」と呼びます。

英語だと"spread"です。

スワップ・アービトラージ

スワップポイント投資でのアービトラージとは、「スワップポイントは業者の裁量で自由に決められる」という性質を利用したトレード方法です。

南アフリカランド/円を使ってスワップ・アービトラージを行う場合、業者Aでは10ロット当たり1日で買い80円/売り-80円、業者Bでは買い60円/売り-60円のスワップポイントを付けていたとします。

シンプルなスワップポイント投資の場合

シンプルなスワップポイント投資を行うのであれば、買いスワップポイントの業者Aでランド/円を購入して保持しておくだけで、80円×365日=年間29,200円のインカムゲインが得られます。

ですがこのポジションを解消するときにレートが下がっていたら、インカムゲイン以上のキャピタルゲインによる損失が生じるというのが、スワップポイント投資の問題点でした。

ここで登場するのがスワップ・アービトラージという考え方です。

スワップ・アービトラージの場合

アービトラージは価格差を利用した取引であると説明しました。

ここでは業者Aと業者Bのスワップポイントの価格差を利用します。つまり業者Aでランド/円を買って1日80円のスワップポイントをもらいつつ、業者Bでランド/円を売って1日60円のスワップポイントを支払います。

すると差額である20円のスワップポイントが、毎日もらえる計算になります。

もらえるインカムゲインは減ってしまいましたが、ポイントは異業者で両建てしているので、キャピタルゲインの差が相殺されるという点です。

このようにスワップ・アービトラージでは、スワップポイントの価格差がプラスになる2業者を見つけることができれば、キャピタルゲインの損失を発生させずに極力リスクを抑えつつ、スワップポイントを得ることができます。

国内業者が無難

スワップ・アービトラージは異業者間での両建てを前提としています。

海外業者はゼロカットシステムを悪用されないよう、両建てを禁止している業者がほとんどですので、国内業者を選びましょう。

国内のDD業者であればスプレッドが狭く、初期に抱える含み損も非常に軽く済みます。また他の手段で儲けている分、高めのスワップポイントを提供してくれる業者も多数あります。

Eタイプ・サラリーマンである信用を武器にして、複数の国内業者に取引口座を作りましょう。

スワップ・アービトラージの注意点

キャピタルゲインの損失を発生させずに、リスクを抑えつつインカムゲインをもらい続けられるスワップ・アービトラージですが、いくつか注意点があります。

リスクがない投資法は存在しませんので、どのようなリスクがあるかを把握してからチャレンジしましょう。

注意点①「資金効率が下がる」

1つ目の注意点は、資金効率の悪化です。

仮に軍資金が100万円あったとします。

この軍資金を使い、シンプルなスワップポイント投資で30ロットを買いで持つと、業者Aでは10ロット当たり1日で買い80円/売り-80円のスワップポイントが付きますので、年間で80円×365日×3=87,600円。年利8.76%となります。

スワップ・アービトラージでは、複数の業者を利用してポジションを持ちます。

同じ軍資金を2つに分けて、業者Aで15ロットを保持し買いスワップ80円をもらい、業者Bで15ロットを保持し売りスワップ-60円を支払います。1日当たりのスワップポイントは20円ですので、年間で(80-60)×365日×1.5=10,950円。年利1.95%となります。

このように為替変動のリスクは避けられますが、証拠金が倍必要になる=ロット数が半分になること、もらえるスワップが差額になることを考えると、正直物足りないと感じる方もいらっしゃるでしょう。

ですがこの注意点①「資金効率が下がる」に関しては「為替変動リスクを低減できているのだから、許容できる」という方も多いでしょう。

スプレッドに注意

スワップ・アービトラージでは、当然ですが最初にスプレッド分のマイナスから始まります。

もらえるスワップが差額になった状態でスプレッド分を回収しなければいけないので、業者にもよりますが最初の半月~1カ月程度は赤字が維持されることになります。

頻繁に売り買いを行うと、その都度スプレッドが発生してしまうので、設定に余裕をもって始めましょう。

注意点②「資金管理の手間が倍になる」

2つ目の注意点は、資金管理の手間の倍増です。

2つの業者を使いポジションを持つのですから、単純に資金管理についても2倍考える必要があります

特に高金利通貨は薄商いの時を狙ってフラッシュクラッシュに見舞われる可能性がありますので、余裕を持った設定が必要です。

為替が上に変動した場合、買いポジションを持っている業者側の含み益は大きくなり、同時に売りポジションを持っている業者の含み損は大きくなります。

売り側がロスカットラインに近づいてきたときどうするでしょうか?

対応①買いポジションを決済して証拠金を移す

まず考えられるのは、含み益を抱えている買いポジションを利確して売り側の口座に移すことです。

これは全くおススメできません。

1つ目のリスクは一時的に片張りになってしまうこと。売りポジションだけが存在してマイナススワップを喰らい続けるわけですから、レートが戻るまで、積み上げてきた利益がどんどん減っていきます。為替変動リスクを無くすための、せっかくの両建てが台無しです。

2つ目のリスクはスプレッドの広がりです。売りポジションのロスカットラインに近づく現象が、時間を掛けてジワジワと来ていたら別ですが、フラッシュクラッシュなどで乱高下している相場であればスプレッドが広がっている可能性があります。このような時には買いポジションを決済しても、通常よりも不利なスプレッドでの決済となってしまいます。

対応②余剰証拠金を移す

次に考えられるのは、証拠金維持率に余裕のある買い口座から余剰になっている資金を出金し、売り口座に入金することです。

確かにこれは効果がありますが、注意点もあります。

1つ目は時間がかかることです。一般的な業者では即日入金・2日後出金くらい、出金には時間がかかります。これではロスカットに間に合わないかも知れません。

2つ目の注意点は頻繁に行えないことです。普段の取引で入金・出金とも無料で行えているのは、手数料を業者が負担してくれているからに他なりません。余裕のない資金設定をしてしまい、頻繁に口座間で入金・出金を繰り返すたびに、業者に手数料の負担を強いることになります。悪質になると口座凍結の恐れもあるので、やめましょう。

対応③同時に決済する

買い業者側も売り業者側もロスカット前に同時に決済を行ってしまえば、片張りでマイナススワップを喰らうこともありません。これが現実的な選択肢です。

これにも注意点があります。

まずはスプレッドが広がっているかも知れないこと。急変相場では買いも売りもスプレッドが広がり、通常よりも不利なレートで決済させられるかも知れません。

また再開するためには再度スプレッドの支払いから始めなければいけないことにも注意が必要で、再度半月~1カ月程度の赤字解消を待つことになります。

以上から、そもそもロスカットラインを割りそうになること自体が大きなマイナスであることが、お分かり頂けたと思います。

為替変動リスクを無くす目的で選んだスワップ・アービトラージで、為替変動にヤキモキするのはおかしいと思いませんか?以上を鑑みると、下記が現実的な運用となります。

現実的なスワップ・アービトラージの運用方法

  1. 買い・売りとも余裕のある資金設定を行う。
  2. この金額に達したら買いも売りも決済という指値・逆指値を入れておく。
  3. スプレッドが開いていることがあるので、指値・逆指値はその分を考慮して設定する。

この注意点②「資金管理の手間が倍になる」に関しては、「余裕のある資金設定を行って放置する」ことで、解決が可能です。

注意点③「スワップポイントの変動」

3つ目の注意点は、スワップポイントが変動することです。

業者が自由に設定できるのがスワップポイントの魅力ではあるのですが、これは同時にリスクを抱えています。

開始時には「業者Aは買い80円、業者Bは売り-60円なので、毎日20円もらえる!」と意気込んで始めてみたものの、数か月後に毎日5円になってしまうこともありますし、下手をしたら逆転してマイナスになってしまうことも有り得ます。

この注意点③「スワップポイントの変動」だけは、残念ながら避ける方法がありません。利用者側がどんなに頑張っても解消できない、スワップ・アービトラージが抱える本質的なリスクと言えます。

年間を通じて安定したスワップポイントを提供してくれる業者を選ぶしかありませんが、これらの業者がずっと同程度のスワップポイントを付与してくれる保証は一切ありません。

いくら儲かるのか?シミュレーション

スワップ・アービトラージの注意点については、お分かり頂けたでしょうか?

注意点③「スワップポイントの変動」はどうしようもないのですが、注意点②「資金管理の手間が倍になる」については「余裕のある資金設定」で解決することができます。この前提で注意点①「資金効率が下がる」の問題を解決すべく、為替変動リスクを低減した上で、どれくらい利益がでるかについて、シミュレーションしていきましょう。

シミュレーションの前提

  • 2020年9月現在の情報。
  • 軍資金は100万円想定で、2業者に50万円ずつ振り分ける。
  • 余裕のある資金設定を行うため、買い側が「現在のレートの半分が、ロスカットライン下限となる」ロット数を設定。
  • 売り側のロット数は買い側と同じにして、ロスカットライン上限を決める。
  • 現在付与されている10ロット当たりのスワップポイントが、今後も変動しない。

自分も全ての業者に口座を持っているわけではなく、あくまで各業者が提示しているスワップカレンダーの情報を持ってきただけです。

もらえるスワップポイントは日々変動しますので、1週間後に調査したら全く異なる組み合わせになっていたり、マイナスになっている可能性が十分にあります。

①南アフリカランド/円

まずは高金利通貨3兄弟と呼ばれる1つ、南アフリカランド/円について試算してみましょう。南アフリカの2020年9月現在の政策金利は3.5%です

買いのスワップポイントが高い業者、売りのスワップポイントが少ないマイナスで済む業者の組み合わせは、下記になります。

  業者 スワップポイント ロット数 ロスカットレート
買い LIGHT FX 71円/日 15 3.018円
売り 外為どっとコム -16円/日 15 9.268円

現在のレートは約6.2円なので、3.1円以下になっても耐えられるロット数を計算すると、買い業者では15ロットで3.018円まで耐えられることが分かりました。売り業者でも同じロット数で耐えられる上限を算出すると、9.268円です。

南アフリカランド/円の史上最安値は5.58円でした。下限3.018円・上限9.268円を突破しない想定で、この値で算出してみましょう。1日に貰えるスワップポイントは(71-16)×1.5=82.5円です。年間では30,113円になりますので年利3.01%です。

②メキシコペソ/円

高金利通貨3兄弟の1つ、メキシコペソ/円についても下記業者で試算します。メキシコの2020年9月現在の政策金利は4.5%です

  業者 スワップポイント ロット数 ロスカットレート
買い 外為オンライン 166円/日 20 2.363円
売り みんなのFX -55円/日 20 6.990円

メキシコペソ/円の史上最安値は4.22円でした。現在4.770円のレートが下限2.363円・上限6.990円を突破しない想定で算出します。

1日に貰えるスワップポイントは(166-55)×2=222円です。年間では81,030円になりますので年利8.10%です。

このスワップポイントが維持されるのであれば、当サイトの目標である「資産を年利5%で増やす」を達成できそうですね😎

③トルコリラ/円

トルコの2020年9月現在の政策金利は10.25%ですが、高金利通貨3兄弟の1つであるトルコリラ/円については、有意な業者ペアが見つかりませんでした。

トルコリラは長年下落が続いていますので、片張りだとしてもスワップポイント投資には向いていなさそうです。

  業者 スワップポイント
買い 外為オンライン 21円/日
売り 外為どっとコム -20円/日

④オフショア人民元/円

高金利通貨3兄弟には含まれませんが、中国の人民元についても試算してみましょう。

中国には政策金利という言葉はありませんが、ローンプライムレートと呼ばれる金融機関の貸出金利目安があり、事実上の政策金利の役割を果たしています。2020年9月現在は3.85%です。

中国の通貨は人民元、略称はRMBやCNYです。RMBはRenminbi(人民幣・レンミンビー)の略で、CNYはChinese Yuanの略です。

¥マークの意味

日本国内では¥マークはYen(円)の略ですが、中国国内ではYuan(元・ユァン)の略です。

出張で行った上海のレストランで「麻婆豆腐 ¥15」と書いてあって、「麻婆豆腐が15円!安い!!」と驚いた記憶があります。

人民元は約16円ですので、15円ではなく240円でした。それでも安いですが😅

ちなみにこのRMB/CNYですが、日本に住む我々は取引ができません。CNYは中国当局に変動幅が制限されていて、中国国内で取引されている通貨のため「オンショア人民元」と呼ばれています。

これに対して我々が取引できるのは「オフショア人民元」と呼ばれるCNHです。CNHはChinese Hong Kongの略で、主に香港市場で取引されている通貨になります。ということで、オフショア人民元/円でスワップ・アービトラージが成り立つか試算してみましょう。

  業者 スワップポイント ロット数 ロスカットレート
買い みんなのFX 70円/日 6 7.433円
売り 外為どっとコム -17円/日 6 23.089円

オフショア人民元/円の史上最安値は11.646円でした。現在15.469円のレートが下限7.433円・上限23.089円を突破しない想定で算出します。

1日に貰えるスワップポイントは(70-17)×0.6=31.8円です。年間では11,607円になりますので年利1.16%です。

以上がシミュレーションになります。もらえるスワップポイントももちろんですが、必要証拠金からはじき出されるロット数に応じて、年利が大きく変わることが分かりました。

手法別のメリット・デメリット

以上がスワップ・アービトラージの説明です。

前のページから、外貨預金、シンプルなスワップポイント投資、スワップ・アービトラージの3つについて説明しました。

最後にメリット・デメリットを整理しましょう。

  外貨預金 スワップポイント投資 スワップ・アービトラージ
メリット ①値動きが無くてもいい

①納税タイミングのコントロール

②資金効率が良い

③値動きが無くてもいい

①納税タイミングのコントロール

②値動きが無くてもいい

③為替変動に強い

デメリット

①為替変動に弱い

②利息が源泉徴収される

③レバレッジが利かない

①為替変動に弱い

②スワップポイントの変動

①スワップポイントの変動

②資金効率の悪化

③管理の手間

まず外貨預金に対しては、スワップポイント投資・スワップ・アービトラージとも優位と言えると思います。

スワップポイント投資とスワップ・アービトラージは一長一短があり、難しいところです。

暴落時に「お宝ポジション」を持てているのであれば、スワップポイント投資の方が有利なのは間違いありません。好きなタイミングでこれからポジションを持つのであれば、「余裕のある資金設定」を前提としたスワップ・アービトラージで、満足のいく年利となる通貨ペア・業者ペアを見つけるのも良さそうです。

スワップポイントの変動だけは両者とも避けようがありませんが、スワップ・アービトラージの方がシビアに影響を受けることを忘れないでください。

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