心理でなく相場と戦おう!FXで陥りがちな行動経済学



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ここでは最近何かと話題の「行動経済学」の中から投資、中でもFX取引で陥りがちな心理状態や認知バイアスについて説明していきます。

プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、意思決定を行う際の認識の歪みを表した理論です。

まずは期待値について考えてみましょう。

期待値とは

プロスペクト理論の前に、まずは「期待値」について説明します。

期待値とは、ある試行の結果得られる値に、起こる確率を掛け合わせたものを足し合わせたものです。学校で習いましたね😊

例えばこのような二択を迫られたとします。

  • ① 必ず100万円を差し上げます。
  • ② コインをトスして表が出たら200万円を差し上げます。裏が出たら50万円を差し上げます。

皆さんはどちらを選びますか?

これらの期待値を計算すると、①は100万円×1.0=100万円です。②は200万円×0.5+50万円×0.5 =125万円です。

期待値で考えると②の方が1.25倍も多いのにもかかわらず、実際にアンケートを取ると①が多いそうです。なぜでしょうか?

これはプロスペクト理論で説明が付きます。

プロスペクト理論と価値関数

プロスペクト理論では、人間が損得に対して感じる感情をモデル化し、価値関数として表します。

価値関数グラフでは、横軸が利益と損失、縦軸が人間が感じる嬉しさと悲しさを表しています。

この関数によると、例えば100万円が得られた嬉しさを1.0とすると、100万円を失う悲しさはその2.25倍となります。

つまり数学的な期待値とは裏腹に、心理的な期待値は大きくマイナスとなるのです。

この価値関数グラフを踏まえて、先ほどの二択をもう一度考えてみましょう。

  • ① 必ず100万円を差し上げます。
  • ② コインをトスして表が出たら200万円を差し上げます。裏が出たら50万円を差し上げます。

100万円が得られる嬉しさよりも、得られないかも知れない悲しさの方が上回るので、多くの人は数学的期待値が大きい②ではなく、確実に100万円が貰える①を選ぶのです。

FXで起こる現象

プロスペクト理論をFXに当てはめてみましょう。

仮に70%の確率で相場の上げ下げが予想できる、画期的な裁量トレードの手法があったとします。一度のトレードの利益確定額を+5,000円、損切額を-5,000円としてトレードを100回繰り返すと、次のようになります。

  • 「勝ち」が70回 = 70 × 5,000円 = 35万円の利益
  • 「負け」が30回 = 30 × 5,000円 = 15万円の損失

トータルで20万円の利益になります。

確率論の「大数の法則」に従い、トレードを繰り返すほど70%という確率に収束していくため、高確率で利益が出る素晴らしい手法です。常勝はしなくとも、損は小さく利益は大きいので「損小利大」となり、FXトレードのあるべき姿です。

大数の法則とは

大数の法則とは、試行回数を積み重ねていくと本来の正しいデータに近づいていくという法則です。

サイコロを何度も振ると、1から6の各数字が出る確率は6分の1に近づいていきます。

ですが同じことを人間がやった場合、プロスペクト理論により次のような結果になるかも知れません。

  • 勝率70%のはずなのに負けトレードが3回も続いてしまった。4回目でやっと勝てたので5,000円まで待たず2,000円で利益を確定してしまう。
  • -5,000円を超えたけど勝率70%のはずだから、こんなに負け越すのはおかしい。「きっと相場は戻るはず」と思って損切せず-10,000円まで損失を出してしまう。

人間が実際にトレードを行うと、プロスペクト理論によりこのようなことが多々起こります。

利益が出たら早く確定させたい、損失は悲しさが2.25倍なので確定させたくないという心理が働き、せっかくの損小利大の手法が損大利小になってしまいます。

FXでの対策

FXでプロスペクト理論に引っ掛からないよう、対策を考えましょう。

人がやらない

エントリー・利確・損切の全てを、人間がやらずにシステムトレードに任せる。

予め決められたロジックでプログラミングされたシステムトレードを使うことで、プロスペクト理論に引っ掛かって心理的な期待値を追い求めることなく、数学的な期待値に基づく冷静なトレードが可能になるでしょう。

ギャンブラーの誤謬

「ギャンブラーの誤謬」とは、主観や経験を信じて誤った判断をしてしまう心理状態を指します。「誤謬」は「ごびゅう」と読みます。ミスや誤りという意味です。

ギャンブラーの誤謬とは

ここではコインを投げるコイントスゲームで考えてみましょう。

  1. 50%の確率で表か裏が出るコインがある。
  2. 次にコインをトスして表が出るか、裏が出るかを当てられたら、掛け金が倍になって返ってくる。
  3. 毎回1万円を賭ける。
  4. 最初に表が出て1万円プラスになった。
  5. その後、4連続で裏が出てしまったので、トータルでマイナス3万円。

このような条件でゲームを行う場合、次は表が出るでしょうか?裏が出るでしょうか?

この状況で「4連続で裏だったので、そろそろ表が出るはず」「取り返すために、裏に3万円賭けよう」と思ってしまうのが、ギャンブラーの誤謬です。

事前確率と事後確率

表が出た後に裏が5回連続する事前確率は、50%の5乗なので3.125%です。これだけ考えると次は96%以上の確率で表が出る気がしてしまいます。

ですが4つ目の裏が出た現在では、過去の履歴は全く関係ありません。次に裏が出る事後確率は、当然50%です。

事前確率と事後確率を混同してしまったり、「ずっと裏が続いたから、そろそろ表が出るはず」という根拠のない心理状態から、誤った判断をして損失を膨らませてしまうのです。

FXで起こる現象

ギャンブラーの誤謬をFXに当てはめてみましょう。

  1. 相場が上がると思ったので、買いでエントリーする。
  2. その後10pips下がってしまい、取り返すためにナンピン買いをする。
  3. その後も10pips毎に、ナンピンを合計4回繰り返す。
  4. 「ここまで下がったので、さすがにそろそろ上がるはず」と思い、ロットを上げてさらにナンピン買いをする。
  5. 結果、大きな損失となる。

相場は上がるか下がるかの50%の確率にもかかわらず、「既に買いポジションを持っているから」「ここまで下がったから」という根拠のない理由で、ロット数を上げて損失に繋がってしまいました。

FXでの対策

FXでギャンブラーの誤謬に陥らないよう、対策を考えましょう。

実際のFX取引では相場が上がりやすい局面もあれば、下がりやすい局面もありますので、コインのように50%とは言い切れません。過去の相場の経験を反映したロジックを使えば、勝率を上げることができるでしょう。

ナンピン自体悪いものではなく、使い様だと思います。ただどんな局面でも「エントリーと逆の方向に動いたら、安易にナンピンを繰り返す」や、「取り返すためにナンピン回数に応じて、徐々にロット数が増えていく」というロジックでは、長期的には到底勝つことはできないでしょう。

ナンピンEAに注意

いくら「システムトレードに任せるべき」と言っても、注意が必要な場合があります。

巷では無料でナンピン系EAと呼ばれるものが配布されていることがあります。

これらのEAでは利用者の利益ではなく配布者のIB収入を目的としたものが多いことに注意しましょう。

つまりナンピンが配布者の利益に繋がるので、どんどんポジションを持ってしまうものが多いです。よく考えて利用しましょう。

一度退場したナンピンロジックも、同じ作者が違うロジック名でリリースして来たりしますので、非常に厄介です。

その場限りでナンピンをするのではなく、数年単位の大局を見てリピート系のロジック切り替えると、ナンピン問題は根本的に解決するでしょう。

リピート系ロジックを用いる

20pipsずつナンピンすることと、20pips毎にトラップが仕掛けられたリピート系は一見同じように思えますが、全く違うものです。

バックテストによりどれくらいのpipsでトラップすれば破綻しないか、その場合のロット数はどうすべきかなど、長期の相場の経験を踏まえてパラメーターを決めることができますので、ナンピンのように短期で大きく負けることは少ないと思います。

ただナンピンEAとは異なり、リピート系EAでは安全性を見るので短期的に利益を上げることが難しくなります。

この問題点を複利で解決するのが、オセアニアブラザーズです。相場が上がるか下がるかのコイントスを行うのではなく、相場が長期間レンジ内に収まるかを予想してパラメーターを決めることがポイントです。

 | GogoJungle
「オセアニアブラザーズ」複利 × リピート = FXで資産運用

サンクコスト効果

「サンクコスト」とは、英語では"sunk cost"と書きます。つまり埋没してしまった費用のことです。

今からどのような行動をしても、もう既に回収することができないコストのことを指します。

サンクコスト効果とは

既に費用を投入して損失を出しているにもかかわらず「せっかくここまで費用を掛けたのだから」と撤退できない心理に陥ってしまうことを、サンクコスト効果と呼びます。

  • 映画を見たが最初の数分でつまらないことが分かった。でも「せっかく来たので」「お金払ったので」という理由で時間を無駄にしてしまう。
  • アトラクションの行列に30分並んだが、係員にあと1時間は待たされることを告げられた。完全に想定外なのに「せっかく並んだので」という理由で、並び続けてしまう。

このような「せっかくだから」「もったいないから」という理由で現在の行動を継続してしまうことに、覚えはありませんか?

FXで起こる現象

サンクコスト効果をFXに当てはめてみましょう。

  • 有料で購入したトレード手法で何度も損を出しているにもかかわらず「せっかく購入したから」と止めることができない。
  • エントリー後、何度ナンピンしても逆方向に損失が膨らむが「ここまでポジションを持ったから」とナンピンを続けてしまう。

このように自分の中でも「止めるべき」と分かっているにもかかわらず、「もったいないから」とトレードを継続してしまい、さらに損失を広げてしまいます。

FXでの対策

サンクコスト効果はコンコルド効果とも呼ばれます。実際に起きた旅客機事業から名づけられています。

コンコルド旅客機事業

多額の開発費用を投じて「コンコルド」と呼ばれる音速旅客機が開発されていましたが、途中で採算が合わないことが分かりました。

運航を続けても投資額は回収できないことは分かっていたのにもかかわらず、既に多額を投資してしまったのでやめることができませんでした。

このような心理状態に陥ってしまう問題に対して、経済学者ピーター・ドラッカー氏は「体系的廃棄」という考え方で解決すべきと提唱しています。

体系的廃棄

  1. 現在やっている事業を、まだ始めていないと仮定する。
  2. 「それでも今から、その事業を始めるか?」を自問自答する。
  3. 答えがNoであればその事業は即刻中断して、新しい事業にリソースを回す。

これと同じように「やってなかったとしても、やるか?」「エントリーしてなかったとしても、エントリーするか?」と自問自答することで、FX取引でもサンクコスト効果に陥りにくくなり、損切りを決断できます。

ただ、一番良いのはサンクコストが生まれないこと。つまり「そもそも損をしないこと」ですので、信頼できかつ利益を産む手法を見つけることが最善策です。

確証バイアス

「バイアス」とは偏り、先入観という意味です。ここでは認知バイアス、つまり認知の偏りや歪みの代表例である確証バイアスについて説明します。

確証バイアスとは

「確証バイアス」とは、自分が既に持っている価値観に近い情報や、自分にとって都合が良い情報ばかりを集めてしまう現象です。

  • A型の人の几帳面な行動ばかりが目につき、「A型らしいな」とレッテル貼りを強める。
  • 旅行の前日にいくつも天気予報サイトを見て、雨が降らないと予想しているサイトを見て安心する。
  • 内定をもらった会社の評判を検索するが、良い評判ばかりが目についてしまう。

このような現象に、身に覚えはありませんか?

FXで起こる現象

確証バイアスをFXに当てはめてみましょう。

  • 買いでエントリーして含み損を抱えている状態だが、相場が上がる好材料のファンダメンタルズばかりが目についてしてしまい、損切できない。
  • どうしてもポジションが持ちたく、テクニカルが成り立つエントリーポイントを、通貨や時間足を何度も切り替えて無理やり探してしまう。

このように「既に買いポジションを持っている」という自分の状態に対して都合が良い情報ばかりを集めてしまうことや、ポジポジ病の解消を後押ししてくれる根拠を無理やり探してしまうのが、FX取引での確証バイアスと言えるでしょう。

FXでの対策

FXで確証バイアスに陥らないよう、対策を考えましょう。

人がやらない

エントリー・利確・損切の全てを、人間がやらずにシステムトレードに任せる。

やはりこれに尽きます。

システムトレードはプログラムですので、当然ですが心理状態が不安定になることはなく、認知バイアスにも引っ掛かりません。

「機械のように淡々とトレードしなければ」と心掛けるのではなく、そもそも機械にやらせることが肝要です。

少数の法則

「少数の法則」とは、少ないサンプル数で物事を判断してしまう心理現象です。

少数の法則とは

少数の法則の名前は、統計学の「大数の法則」に由来します。

大数の法則とは「サイコロを何度も振ると、1から6の各数字が出る確率は6分の1に近づいていく」という法則でしたね。

少数の法則は大数の法則の逆です。つまり「3回連続で1の目が出たので、このサイコロは1が出やすいサイコロだ」と決めつけることを言います。

試行回数が少ないのにもかかわらず、決めつけてしまうことにより、損失を生み出してしまいます。

  • 食べログで数件しかレビューされてない店なのにもかかわらず、巷での評価が高いと解釈し店を予約してしまう。
  • 成人式で素行が悪い数名が取り上げられているニュースを見て、今年の新成人は全て素行が悪いと決めつけてしまう。

このような現象に、身に覚えはありませんか?

FXで起こる現象

少数の法則をFXに当てはめてみましょう。

  • 新しく導入したシステムトレードが3連勝したので、儲かると思いロット数を上げた途端に負け、大損してしまう。
  • 1年間のバックテストで大きく稼いでいるシステムトレード信用し、購入してみたが全然勝てない。

このように「3連勝」や「バックテスト1年間」といった、試行回数が明らかに少ないにもかかわらず「これは勝てるシステムトレードだ」と思い込んでしまうと、結果として大損に繋がってしまうことがあります。

FXでの対策

FXで少数の法則に陥らないよう、対策を考えましょう。

ロット数を徐々に上げる

新しく導入したシステムトレードやロジックは、時間を掛けてロット数を上げる。

これが1つ目の対策です。0.01ロットから始めて、時間を掛けて取引回数を重ねて見極めることが重要です。勝てることが分かってきたら0.02ロットにします。

さらに好成績を確認できたら0.03ロットに上げます。徐々にロット数を上げていくことで、どのような動きになるか分からないシステムトレードで大損することを減らすことができます。

長期バックテストの実施

短期間のバックテストしか公開していないシステムトレードを使わない。

2つ目の対策として、長期バックテストを公開しているシステムトレードを使うように心がけましょう。バックテスト期間の長さがサンプル数の多さを保証し、様々な相場でも通用するかが確かめられます。

1~2年では短く、最低5年。できれば7年くらい公開していると理想的です。またバックテストはあくまで過去の相場に対してのシミュレーションですので、加えて開発者本人がリアルマネーでのフォワードテストも公開していると、より安心でしょう。

たまにフォワードテストを公開していても、デモ口座だったりする人がいるので注意しましょう。

まとめ

以上がFX取引を行う際、陥らないように気を付けなければならない心理状態や認知バイアスです。

紹介したのは全体のほんの一部で、心理的なトラップは他にも沢山あります。

心理状態は一定でない

「認知バイアスは理解した。そのうえで裁量トレードを続けよう」と考えていたとしても、人間の心理状態は毎日一定ではありませんので、ミスをしてしまうかも知れません。

そのミスをした経験が心理的に重みづけして記憶されていくと、トレードを繰り返すほど正しい判断ができなくなるかも知れません。

ロット数で判断が変わる

淡々と判断できるようになったとしても、ロット数が上がると同じ判断ができなくなるかも知れません。

マイナス5,000円の含み損は受け入れて正しく損切できたとしても、マイナス50万円は受け入れられなかったりするものです。

このような心理的なトラップに引っ掛からないためにも、「人間がトレードするのではなく、システムに任せる」「長期間のバックテストや、リアルマネーでのリアルトレードが公開されているような、信頼できるシステムトレードを選ぶ」など、自らの選択で変えられるものは変えていくことが必要だと思います。

どんなに信頼できるシステムトレードが見つかったとしても、投資である以上は絶対に損をしない手法などありません。(あるなら教えて欲しいです😂)

我々が戦うべきは相場であり、自分の心理状態と戦っている場合ではないと思います。

You cannot change others or the past. You can change yourself and the future.

他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。

これはカナダの心理学者エリック・バーン氏の名言です。

自らの選択で可能な限り不確定要素を減らして、未来の相場に一緒に臨んでいきましょう。



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